今もなお進められる紅豆杉の研究について
紅豆杉は成長するまでに1000年以上の月日がかかるほど、貴重な植物なため、中国政府は紅豆杉を「国家一級保護植物」として、伐採や売買を禁止していました。
しかし、後に日本とアメリカの2ヶ国での流通を認めたことが、紅豆杉研究のはじまりとなっています。
注目される紅豆杉の抗癌作用
そもそも中国政府が一部の流通を認めたのは、紅豆杉の中に抗癌作用が発見されたことも1つの理由でした。現在医薬品として使用されている「タキソール」と「タキソテール」がそれにあたります。
1956年、当時植物や菌類の有効成分を研究していた科学者ルーカス氏が、紅豆杉の抗癌作用を発見。しかし、植物にはたくさんの成分が含まれているため、抗癌作用のある物質だけを取り出して研究をするための技術がまだありませんでした。
1971年、科学者であるヴァニ氏が、紅豆杉から抗癌物質のみを取り出すことに成功。「タキソール」と名付けました。
1989年当時、抗癌物質のみを取り出すことができるようになったものの、紅豆杉の流通には限りがあり、また1本の紅豆杉に含まれるタキソールもほんのわずか。臨床応用するには、たくさんの量が必要だったのです。
そんな時、米国フロリダ州立大学のロバート・ホルトン博士がタキソールの科学的合成に成功。次の年には、タキソールは商標として登録され、抗がん剤を商品化したのです。(一般名は「パクリタキセル」)
現在では、世界100ヶ国以上で臨床応用されるようになり、日本でも、抗癌剤として認可され、卵巣がんや乳がん、子宮がん、肺がんなどで保険適用の薬となっています。
日本で厚生労働省から認可されている抗癌剤は100種類以上。その有効性はおよそ30%と言われていますが、タキソールの有効率は75%と非常に高いのが特長です。
ただし、タキソールを化学合成した抗癌剤には副作用が伴います。また、誰でも使用できるというわけでなく、医師の指導や管理がなければ使うことはできません。
そこで研究者たちは、毒性・副作用のない紅豆杉そのものが活用できるようにならないかと、日々研究を進めています。
宇宙実験による紅豆杉の研究
中国では、宇宙実験による紅豆杉の研究が進められているそう。2002年12月30日に打ち上げられた「神舟4号」には、紅豆杉の苗と数千種類の癌細胞を試験管に入れたものがのせられていました。
特殊な環境の中、紅豆杉の抗癌作用はどのように変わるのか、また生息周期を早めることができないかなどの研究目的で、宇宙実験が行われています。
「神舟4号」は2003年に無事帰還し、現在も研究が進められています。